職種の性別分離とポジティブ・アクション

2023年版ジェンダーギャップ指数[i]によると、日本は146か国中125位となり、昨年の116位から9ランクもダウンした。特に格差があるのは政治の分野で日本は138位となっている。過去に女性首相がひとりもいないことや、民間企業でも管理職に女性が少ないなども理由のひとつとなっている。ではなぜ女性の管理職が少ないのだろうか。

ひとつは古来より根付いている性別的役割分担の固定観念である。内閣府は20036月、「男女共同参画社会の実現に向け、社会のあらゆる分野において2020年までに女性の管理職に値する地位の割合が30%程度になるよう期待する」(内閣府2003)としているが、女性は家事育児を担うものだから仕事に就いてもすぐに辞めるだろうという固定観念の改善は不可欠である。ふたつ目は、働く分野の性別分離である。女性の職業として代表的なのが看護婦や保母など生活の延長と考えられている職種で、いっぽう男性の職業といえば医師、パイロット、弁護士、政治家など高度な教育や技術が必要な職種である。このように男女で分けて職業を考えていることは少なくない。学校教育の場でも隠れたカリキュラムとして規範や教員の態度など知らずうちに性別分離は行われている。生徒会長や委員長などのメインは男子、副が付く補佐的役割は女子が担うものだと自然とそのような風潮になっている。企業内でも、社長、部長、課長などの役割は男性、受付や事務は女性が担うものだと考えられていないだろうか。このように日本の社会の中全体での性別分離は今もなお多いことがジェンダーギャップ指数にも表れているのである。

 

 このように日本の社会の働く場で重要とされているのがポジティブ・アクションである。ポジティブ・アクションとは積極的改善措置と訳され、改善措置を設置するだけではなく不平等状態を是正する措置としてアクションを行うことが重要視されている。措置の設置だけで終わらせるのではなく、実際にその不平等さを埋めるための研修会や男女どちらも採用するクオーター制の導入など、より具体的に落とし込んだ政策が必要となってくる。フランスでは、政治分野での政党候補者男女同数にするパリテ法の導入や、各政党の候補者名簿にクオーター制を導入するなどの対策で、2011年には国会議員として女性が占める割合は45%と成果は十分実現できている。具体的なポジティブ・アクションは日本にとって最も必要なことといえよう。

 厚生労働省によるとポジティブ・アクションの取り組みを積極的に進めた企業ほど、企業経営の業績や売り上げは良好であるという関係が見られている(厚生労働省2009)。多彩な人材による新しい価値の創造、幅広い高い質の労働力の確保、企業イメージの向上による外部評価、女性労働者の労働意欲の向上など数々のメリットが効果として報告されている。これだけのメリットがあるとされながらも企業規模では大きく差があることも見逃すことはできない。大企業では6割以上取り組んでいるが、従業員数が少ない企業ではまだまだ十分とはいえず、企業規模が小さくなればなるほど取り組みは17.4%まで低下している(厚生労働省2009)。ポジティブ・アクションは小規模な企業にはまだ周知されていないこともあり、小規模企業間の情報共有も不可欠である。従業員が少ない企業では取り組んだ企業の経営メリットの情報共有や時代に合った柔軟な人材採用など、企業規模に合わせた積極的な取り組みが重要といえるだろう。

 

 

厚生労働省(2009)ポジティブ・アクションの促進について~男女均等な職場を目指して~https://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/11/03.html(最終閲覧日:20231015日)

 



[i] 世界各国の男女の平等度についてデータを基にして算出し、順位を付けてわかりやすく可視化したものをジェンダーギャップ指数とし表している。2023年度の報告書は621日に公開された。